奈良県下北山村の「鬼の里」前鬼で1300年続く宿坊を訪れました
プライベートガイドのご依頼をいただき、3/20(土)~21(日)で大峰は前鬼の宿坊、小仲坊(おなかぼう)を訪れました。
奈良県下北山村の前鬼集落は修験道の開祖・役行者に仕えた鬼の夫婦の前鬼・後鬼が住み着いたのが始まりと言われています。5人の子どもたちがそれぞれ5軒の宿坊を営んでいましたが、明治時代の修験道廃止令によって修験者が激減したのを皮切りに次々と集落を去り、現在は五鬼助(ごきじょ)家の61代目、五鬼助義之さんによって小仲坊だけが維持されています。他の4軒の中には既に絶えてしまった家もあるそうです。
現代では釈迦ヶ岳の登山基地としての役割も果たしている小仲坊ですが、今回は登山というよりはゆっくり滞在して五鬼助さんのお話しを伺うことがメインテーマでした。
まずは1日目。下北山村までは国道169号線をひたすら南下する長い道のり。途中、上北山村のミツマタ群落に立ち寄りました。
奇遇にもこちらは前鬼のミツマタを移植したのが始まりだそう。ちょうど見ごろを迎えていました。
下北山村に到着し、まずは神秘的な七不思議の残る池神社へ。
北アルプスの穂高と同じ名前の明神池。一瞬信州にいるのかと錯覚するような風景でした。
前鬼に向かう前に、下北山村の中心部に位置するきなりの湯のレストランで腹ごしらえ。私は以前から気になっていたダムカレーをいただきました♪ 他にもジビエや特産品の「春まな」を使った定食など、メニューが充実しておりオススメです。
下北山村は奈良県で一番最初に桜が咲くところとしても知られています。すでに多くの樹が見ごろを迎えており、お花見気分が味わえました。あと1週間もすれば満開と思われます。
細い林道を慎重に通過して前鬼へ向かいます。道中、不動七重の滝の威容に圧倒されました。
念願の小仲坊さんに到着!
空模様が怪しくなってきており、天気が崩れる前に周辺を散策します。
2016年に文化庁によって認定された日本遺産のトチノキ巨樹群をご案内しました。ここは釈迦ヶ岳方面の登山道を少し進んだところにありますが、最後は登山道から外れる必要があり道標などはありません。ちなみに、実は日本遺産ガイド資格というものがあり、数年前に取得済みです。ここで役立ててよかったです(笑)
実物は圧倒的な迫力があります。こんな巨木が複数点在しています。
なんとか曇りの間に戻ってくることができました。宿坊周辺はミツマタの大群落となっており、これまで見たことのない規模に一同感動でした。ここには50年前は破竹が植えられていたそうですが、破竹が枯れた後にミツマタが芽吹き、現在の景色となったそうです。当時はミツマタなんて見かけなかったのだとか。今の風景も半世紀後にはまた違ったものになっているのかもしれません。
山の中でありながらお風呂があるのはありがたいです。入浴後、夕食をいただきました。
こちらは朝食。質素ですがお米とみそ汁が本当においしく、何回もおかわりしてしまいました。味噌は自家製の7年ものだそう。
初日の夜から雨となり、2日目は終日雨模様となりました。天気予報もあってか宿泊者は私たちの他に行者さんがおひとりだけで、広々としたお部屋を気持ちよく使わせていただきました。広い縁側を通してみる雨の風景もよいものでした。
あいにくのお天気ではありましたが、立派な石垣がいまでも残る前鬼集落の様子やトチノキの巨樹、五鬼助さんのお話し、怖さすら感じる不動七重の滝など、山に登らずとも時間が足りないと感じるほど充実した時間を過ごすことができました。五鬼助さんご夫妻はもちろん同宿となった行者さんにもじっくりと貴重なお話しを聞かせていただきました。皆さま、本当にありがとうございました。機会をつくってぜひまた訪れたいと思える場所でした。
追記:
今回一番印象に残った言葉は「『前鬼ブルー』っていうのはね、ここ10年くらいで急に言われだしたんですよ。ネットでね、バズるっていうんですかね、バズったんですよ!」と五鬼助さんが仰ったことでした。まさか五鬼助さんの口から「バズる」という言葉が出るとは思いませんでした…笑