奈良吉野の移住登山ガイド ちくちゅーの日記

山が好きで、山に住んでみたくて移住しました。山暮らし、ガイド報告、登山ネタetc.

大峰有数の大氷瀑・琵琶の滝と中の滝を訪ねました

大峰山の東面、下多古川に位置する琵琶の滝が凍結していると聞き、1/14(金)、寒波が緩む前にと観に行ってきました。さらにその奥に流れる中の滝もあわせて訪れました。

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ここの難しさはアプローチにあります。山道というより、登山口までの運転が恐ろしい。下多古(しもたこ)地区は国道から少し入っただけにも関わらず、集落の中ほどから道路が真っ白となり緊張させられます。途中、橋で少し滑りましたが事なきを得、集落を抜けて林道へ。ここで道路が北側斜面から南側斜面に変わるので、標高は上がりますが雪は減ります。

何度かヘアピンカーブを経て湧き水が湧いているポイントへ。ここから先、雪がさらに増えガードレールもないので、不安な場合は林道横のヘリポートに停めて歩くのが無難でしょう。今回は登山口まで車で入れましたが、降雪直後は厳しいと思われます。

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登山口から雪まみれ。

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琵琶の滝展望台まで夏道通り歩いていきます。沢沿いの道で滑りやすいので要注意。展望台直前に岩場があり、帰路は岩に氷が張り付いていて嫌らしかったです。

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展望台が見えるとその背後に琵琶の滝の雄姿が望めます。

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現地で見ると写真とは比べ物にならないほど迫力があります。ここからでも十分絶景ですが、今回はさらに接近を試みます。展望台から先、整備された道はありませんので、ここから登山としても難易度が上がります。

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というわけで滝つぼまでやってきました。滝つぼに降り立つ最後の1mほどが足場がなく厳しい。かつては丸太橋がありましたが完全に朽ちており、使えません。行きはストンと降りたものの、帰りはザックを先にもちあげて空身で必死で這い上がりました。まさかこんなところでアイゼンで岩登りする羽目になるとは…。

見上げると琵琶の滝がドドーンとそそり立ちます。よく見ると二段になっています。

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真正面より。

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巨岩を登ったりくぐったりしてさらに接近。人と比べるとその巨大さがわかるでしょうか。

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落差50mと言われていますが、もっとあるような気がします。かなり大きい。

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最上部のアップ。くらげのような氷の造形が美しいです。完全氷結はしておらず、中央部は水が流れていました。

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振り返るとさきほどまでいた展望台が小さく見えていました。

午前中かつ曇天だったのでここまで近づきましたが、落氷があると一発アウトな場所なので、写真を撮ったらダッシュで逃げます。

さらに古道をたどって、落ち口までやってきました。

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自撮り棒をめいっぱい伸ばして撮影。左側の氷柱が琵琶の滝氷瀑の最上段、下の雪原はさきほどまでいた滝つぼです。かなりスリリング。

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続いて上流を目指し、中の滝へ。正面が中の滝の氷瀑。この日は流れが出ていました。また、右側にも氷瀑が出来ていました。右側は無雪期は気にもならない場所だったはずですが、まるで景色が違うのが面白いですね。

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中の滝の左側は半洞窟のようになっており、ユニークな景色が楽しめます。

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氷柱群が美しい。

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手前にうつっているのは氷筍(ひょうじゅん)。まさに氷の筍(タケノコ)です。

 

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氷筍は上から滴った水滴が凍って形成されます。こちらは水滴がちょうど枝の上に落ちたようで、枝から氷筍が生えているというなかなか珍しい光景でした。

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とはいえ頭上は巨大ツララがロックオン状態なので、やはり写真をとったらダッシュで逃げます。

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帰路、ツララと氷筍がいままさに繋がり氷柱が出来上がろうとしているシーンを見かけました。豪快な氷瀑もいいですが、その日限りの思わぬ景色との出会いも印象に残りますね。

ちなみに無雪期の様子はこちら。

chkch.hatenablog.com

詳しくは山岳雑誌「岳人」2020年8月号に掲載されています。

chkch.hatenablog.com

すごい氷瀑が見られるらしいという話は以前から聞いていて、気になっていた場所ですが、ようやく訪れることができました。山深い印象のわりに意外と標高が低い(琵琶の滝で標高約900m、中の滝で約1,000m)ので、凍結のシーズンはあまり長くはなさそうですが、うまくチャンスをとらえられてよかったです。トラバースなどもあり技術的にはアイゼン、ピッケルの練習にもよいコースだと思いました。アプローチに難はありますが、それだけに滝と出会った時は感動しました。実物は写真の100倍迫力があるといっても過言ではありません。これが我が家からすぐの距離にあるということに、あらためていいところ住んでるな~と感じ入りました。

 

やまちゃんが生誕3周年を迎えました!

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\おかげさまで3周年/

2021.1.11
ちくちゅー登山ガイドサービスのマスコットキャラクター、やまちゃんが生誕3周年を迎えました!
これもいつも応援していただいている皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。
そしてやまちゃんのもとに“こやまちゃん”がやってきました。
これからもやまちゃんをよろしくお願いします!

 

冬の明神平は霧氷の森

本日はM社のツアーガイドを務めさせていただき、台高・明神平へ。
厳冬期とは思えない無風状態で、絶景を存分に堪能できました!
曇天のおかげで私たちが到着するまで霧氷が残っていたのは幸いでした。お昼には晴れ間も覗き、気温の上昇とともに霧氷はどんどんと落ちていきました。
一瞬の芸術ですね。

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台高山脈・薊岳でアイゼン&ピッケル練習

1/8(金)、この冬一番の大寒波が到来する中、台高山脈の薊岳1406mに登ってきました。

アイゼン・ピッケルの練習となるトレーニング山行というリクエストをいただき、当初は大峰・伯母谷覗を予定していましたが、ラッセルのため時間切れとなる可能性が高いと判断し、比較的雪の少ない台高へと転身しました。とはいえ前夜、前々夜と2晩降り積もった雪はそれなりに多く、スノーシューハイクも楽しむことができました。

メジャーな明神平の近くにあって地味なイメージの薊岳ですが、実は標高1400mを越え、高見山や三峰山、池小屋山をしのぐ高峰です。冬季は大又林道終点から北尾根を直登するバリエーションルートか、明神平からピストンする方が多いようですが、今回歩いた西尾根ルートは関西の山では珍しいナイフリッジを体験することができ、トレーニングや腕試しにはぴったりのルートです。

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登山口は標高約400m。ここから頂上まで標高差1000mの登りが始まります。

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植林帯の中の林道歩きからやがて山道へと変わります。途中、視界がひらけるところも。

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かなり低温で木々も寒そう。

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雪山マメ知識をあれこれ喋りながら植林帯の中を登っていきます。大鏡池手前で雪が増えてきたので、各自スノーシュー、ワカン、スーパーカンジキを装着。大鏡池はすっかり雪に埋もれていました。

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大鏡池から先は自然林となり、傾斜が落ちて歩きやすくなります。

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木屋ノ尾頭を過ぎたコルでアイゼン・ピッケルにチェンジ。この先は雰囲気が一変し、岩場のナイフリッジとなります。

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目指す薊岳。なかなか格好いい山です。

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薊岳は雌岳・雄岳の双耳峰。急斜面を乗り越えて、まずは雌岳に登頂!

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雌岳からの下りは足元が切れ落ちているところもあり、緊張させられます。

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無事、本峰の雄岳登頂! 東西に細長い山頂からは周囲の山々を見下ろすことができます。

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下降は慎重に。

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満喫しすぎて、ナイトスノーシューハイクのおまけつきでした(笑)

マイナーな山だけに誰にも出会わず、トレースなしの雪山を歩くことができました。関西でアイゼン・ピッケル練習ができる貴重な山として、おすすめです。

自然公園指導員に委嘱されました

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このたび、環境省自然公園指導員と奈良県自然公園指導員に委嘱されました。

自然公園や指導員について、以下に自分メモを兼ねてまとめておきます。

自然公園って?

普段あまり意識することはないかもしれませんが、有名な山はだいたい国立公園や国定公園になっています。吉野山大台ヶ原吉野熊野国立公園ですし、三峰山や曽爾の山々は室生赤目青山国定公園に含まれています。

興味のある方はこちらに範囲などが載っています。

www.env.go.jp

吉野熊野国立公園。「地図裏」のPDFが範囲図。

www.pref.nara.jp

奈良県内の自然公園の概要

環境省の事業をさせていただいたり、西大台の経緯を勉強したりして感じるのは、現在の自然はそれを守る人々の努力があってここまで来ているということです。

例えば「吉野熊野国立公園の父」と呼ばれている岸田日出男さんがいなければ、吉野の山々は開発の波に飲まれて現在と違った姿になっていたかもしれませんし、西大台の利用調整(簡単にいうと入山規制)は自然公園法がその根拠となっています。法律の陰にはさまざまな議論や実働部隊となった職員の方がいたはずです。

www.town.oyodo.lg.jp

↑岸田日出男さんについて詳しくはこちら

www.env.go.jp

↑自然公園法。利用調整地区については第十五条以降に記載。

その経緯に思いをはせると、日常生活とは関係なさそうな「国立公園」「国定公園」というものにも少し興味がわいてくるのではないでしょうか。当時の人々が愛した自然を壊してはいけないという気持ちにもなります。

指導員とは

「指導員」というと何か偉そうな感じがしますが、実際には何か強制力があるわけではなく、あくまでボランティア的な活動となります。

環境省の指導員手帳によると、指導員とは「国立公園及び国定公園の保護と適正な利用の推進のため(略)、公園利用者に対し公園利用の際の遵守事項、マナー、事故防止等の必要な助言及び指導を行うとともに、必要な情報の収集及び提供を行う」ものだそうです。

他にも手帳には、かつては指導に重きを置かれていたものが、時代とともに役割が変化し、より楽しむための助言や情報収集が業務内容に付け加えられたと書いてあります。裏を返すと、だんだんマナーが向上していき、指導の必要が薄れてきているということなのでしょうか。

指導にしても助言にしてもまずは自分が法律や現地のことをよく知っていることが重要になってきます。それぞれ推薦いただいた方の期待に応えられるよう、より一層の自覚をもって勉強を続け、これからも活動していきたいと思います。

 

こまどりケーブル「こまどりのen」に出演しています

こまどりケーブル株式会社のオリジナル番組「Koma-TV」内「こまどりのen(縁)」コーナーにて取り上げていただきました!

奈良県南部東部エリアのみでの放送となりますが、1月1日~31日まで毎日夜22:00から15分ほどの映像になります。

 2016年のヒマラヤ遠征時に資金稼ぎでアルバイトさせていただいていた、東谷製作所の東谷大輔さんにご紹介いただき、出演となりました(ありがとうございます!)。

大学で登山に出会ってから川上村に至るまでの経緯、ツアーの様子などコンパクトにまとめていただいています。

2月、3月も川上村の若手事業者が出演する予定と聞いています。放送エリアの方はぜひご覧ください!

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2020年の振り返りと2021年の展望

あけましておめでとうございます。未来のことは過去を踏まえてこそ、ということで今年も2020年の振り返りから始めたいと思います。

chkch.hatenablog.com

chkch.hatenablog.com

2020年の振り返りと2021年の展望

去年の記事で「2020年は移動と変化のある一年になりそうです」と書いていましたが、その通りになりました。まず3~5月でヒマラヤ遠征。7月に第一子が誕生。11月に(同じ川上村内ですが)引っ越しをしました。

2020年は新型コロナウイルスに多くの方が影響を受けたことと思いますが、自分も例にもれず、ヒマラヤ遠征ではロックダウンにより帰国が遅れ、帰国後の仕事はすべてキャンセルで見通しの立たない状況が続きました。子どもの誕生時には面会することが叶わず、ドア越しの初対面となりました。

ガイドのようなサービス業は世の中が安定してこそだとつくづく感じ、生活を安定させるために別の道を模索したこともありましたが、そううまくはいきませんでした。考えてみれば当然で、この仕事がやりたくてやっているわけで、景気が悪くなったからと言って急に転身できるはずもありません。ガイド業だけでなく世の中の大半が「不要不急」に分類されるような空気の中では、そううまい話もないだろうとも思います。

現実的には、これからもガイド業を追求し、経済的に余裕をもった状態を保つことが精神の余裕をも生むのだと今は考えています。

個人的な登山はやはり春のヒマラヤ遠征が一大イベントでした。ネパールヒマラヤ、マナスル山域の未踏峰ジャルキャ・ヒマール6473mを目指しましたが、残念ながら5400m地点にて撤退となりました。頂上には到達できませんでしたが、自分が隊長として主体的に動く中で、多くの学びがありました。帰国後はボルダリング中心に過去最高グレードを更新し、ダイエットに取り組み体重を学生時代の水準に戻すなど夏までは比較的動けていましたが、我が子の誕生とともにこれまで登山に割いていた時間を育児に割くことになり、仕事以外では山に行けていない状況です。さすが山男の三大北壁(就職・結婚・出産)の最終局面は過去最高難度ですね(笑)

再び夢を見たい気持ちはありますが、個人的な活動は生活の基盤あってこそということで、当面は優先順位を落とすことになりそうです。今年の春までには遠征報告書を出し、ヒマラヤ遠征に一区切りつけたいと思っています。次の具体的な夢が見つかれば自然とモチベーションも戻ってくると思いますし、それまでは焦らなくていいだろうと自分に言い聞かせています。

仕事の面では冒頭の通り、やはりコロナの影響が大きかったです。その中でも仲間と運営するエコツアー団体ヨイヨイかわかみでは環境省の事業に採択され、吉野山の方々との繋がりができたり、膨大な書類仕事など(笑)新しい経験を積むことができました。

登山ガイドちくちゅー登山ガイドサービスでは、残念ながら宿泊山行をすべて中止し、2019年からの宿題であった大峯奥駈道は2020年も完結とはなりませんでした。小辺路や大杉谷など多くの宿題が先送りとなりました。秋より公募プランを再開し、日帰り山行のみではありますが、白髭岳今西ルート・伯母子岳と龍神岳・雪の伯母谷覗などいくつかの新企画を実現できたことはよかったです。

今年はコロナ対策を行った上での宿泊山行再開を模索していきたいと考えています。さらに積雪期の難易度の高い山(稲村ヶ岳など)やよりマニアックな山なども視野に入れて、プランの幅を広げていきたいと思っています。

生活の面では7月に第一子が誕生し、自分でも驚くほど親バカしています(笑) 見た目でも自分(父親)に似ていると言われることが多く、自分の遺伝子を引き継いだ存在を可愛いと思うように人間インプットされているのかなぁなどと素直に思ってしまうくらいには可愛いです。また我が子の誕生により、今後10年、20年くらいの人生が一気に具体的にイメージできるようになりました。それまでは刹那的な面がありましたが、考え方が変わった部分もあります。

SNSにはちゃんと書いていませんでしたが、実は11月に引っ越しをし、生活環境が劇的に改善されました。それまでは風呂とトイレが外にある、冬は極寒の古民家暮らしでした。引っ越し作業の中でこれまで苦手だった整理整頓に向き合うこととなり、片づけをすると生活の効率がいいという当たり前のことに気づきました…。これは片付いた状態をキープしていきたいところです。

今年はさすがに引っ越しレベルの大きな予定はありませんが、瞬く間に大きくなっていく子どもとの時間を大切に過ごしていきたいと思います。

まとめ

現在においてもコロナの影響で外に出づらい状況に変わりはなく、その分家や身近なところに時間を使っていきたいと思います。新たな家族とともに、家庭と仕事中心に、生活のペースをつくっていく一年としたいですね。

今年もよろしくお願いいたします!

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